経済・政治・国際

2008年12月18日 (木)

ドル・キャリ

米国がゼロ金利政策に突入した。未曾有(みぞうって読み方であってるよね?)の危機に他ならない。日本の不良債権処理の過程を新聞記者としてつぶさに見てきた人間としては、非常に感慨深いニュースだ。


日本がゼロ金利政策を執った結果、ジャブジャブの過剰流動性が生まれ、これが現在の世界的な金融危機の原資になったのは明白だ。


今度は、米国からジャブジャブの過剰流動性が生まれる。いつになるかは分からないが、今度はこれがバブルの原資になるのだ。どこの資産が膨らんで、いつ弾けるのか。


ネタ元と話していたら、「早くもドル・キャリを仕込んでいる連中がいる」とか。日本がゼロ金利政策の真っただ中にあったころ、超低利の円資金を調達した投機筋や投資銀行が米国の土地や商品にカネをツッコミ、バブルが生じた。今度は、これがドル版になるという構図だ。


年明け発表となる新作短編では、この辺にもちょこっと触れた。乞うご期待。

2008年11月20日 (木)

政治部メモ

『社会常識欠けた医者多い』とはどこかの国のトップの発言。元々放言癖のある方だそうで、周囲に諭され、すぐに発言を陳謝したとか。


閑話休題。
かつて大手メディアに在籍していたころ、『メモ』を記すのが重要な仕事の一つだった。記事にはできないオフレコのネタ、あるいは重要人物に夜回りをかけた際の一問一答などを、内部資料として保存したものがマスコミ界で言うところの『メモ』だ。


所属していた経済部には、記者クラブごとに分厚いファイルが何年分も存在し、記者同士の共有財産となっていた(もちろん、他の記者にも見せない独自のメモもあるが)。メモの蓄積がやがてスクープにつながったり、解説記事のバックボーンとなる。


が、政治部は違う。
裏表の激しい世界だけに、「本音と建前」が幅を利かす。政治面に載る美辞麗句の裏側には、政治家の豪快かつ大胆な発言や思想があり、それらを事細かに記した『メモ』がある。派閥ごと、あるいは党派を越えて日夜このメモが永田町に飛び交う。メモをもとに、政治家同士、あるいは政治家と高級官僚がハラの探り合いを展開するわけだ。


記者時代、様々な場面で政治部のメモに接した。あのクリーンなイメージのセンセイがこんなエグいことを言うなんて……てなことは日常茶飯。だが、政治家も心得たもので、ウラとオモテの顔をきちんと使い分け、公の場で本音をポロリなどという場面は少なかった(裏表が最後まで判断できず、早々に追い込まれた御仁はいるけど)。


べらんめい口調で裏表がないのは、人間として可愛げのある証拠かもしれない。だが、政治家がそれをやると、ちょっと事情が複雑になる。センセイ方、いや、リーダーの皆さま。もうちょっと考えてみませんか。

2008年11月13日 (木)

検査

ここ1カ月半、執筆に集中していたミステリーの作業が一段落。次は、年末〆の某小説誌向けの短編(100枚)の準備作業だ。


新たな短編は金融ネタがテーマ。かつて拙著の準キャラで使ったプロが再登場する(キャラの使い回し)。近々、プロット表作りに着手するため、ここ数日資料読みやらネタ集めに奔走した。


ストーリーの山場には、某大手金融機関を登場させる。1カ月前、某新聞社のネットニュースで「危うい話」が扱われた経緯アリ。当該金融機関の猛烈な抗議で記事が削除され、一部関係者の間で注目を集めたのだ。


同金融機関の事情に通じた数人の知人に聞いてみると、「検査」が長年骨抜きになっているという。やっぱりね。ブラックホールになっていたわけだ。


もちろん私が手がけるのは小説。内容はモノカキが妄想したフィクションだ。モデルとなった金融機関をどこに重ね合わせるのかは、読者の自由。原稿は年明けに小説誌にて(間に合うのか?)。

2008年11月 7日 (金)

三河屋ショック

昨日。
三河屋自動車さんが中間期決算と通期の業修を発表。各種報道でご存知の通り、大幅な業績下方修正だ。


私のもとにも、アナリストさんやら機関投資家さんから様々なご意見・ご感想が寄せられた。中には「かつて経験したことのないネガティブ・サプライズ」との声もあり、本日、同社のネガ・インパクトが『三河屋ショック』として市場全体を押し下げるのは確実。


ネタ元の皆さんの御懸念が集中しているのは、下期の想定FXレート。ドル建ては100円、ユーロは130円。現状レベルを考えると、今下期の営業損益がアカという事態にもつながりかねない。他の輸出大手企業は下期のレートをより保守的に「95円」とか「120円」とかで弾いてきたので、三河屋さんの楽観的な前提がより際立った恰好に。


表向きのリポートとは裏腹に、「三河屋さんのビジネスモデルの限界が見えた」との生々しいご批判も。近く連載コラムにて詳報を記す予定。乞うご期待。


2008年10月28日 (火)

時期が悪い

昨日。
日経平均株価がバブル後最安値を更新。
首相は解散・総選挙先送りをにおわせるなど、混乱が続いている。


が、時期が悪い。
需給対策や空売り規制など、小手先の市場対応策では効かない。なぜなら、今の世界的な株価下落は、『換金売り』が主体なのだから。リスク資産を圧縮させ、手元にキャッシュ(現金)を確保しようという機関投資家が大半。


加えて、年末を控えてヘッジファンドの〆が迫るタイミングでもある。
暦年ベースで帳簿を閉じる彼らにとって、毎年この時期は少しでも利益が出ている銘柄は換金の対象となる。昨今の世界的な混乱を鑑みれば、顧客からの解約に備える意味で、「売り急いでいる」(ファンド筋)向きは少なくない。


目先、多少のアヤ戻しはありそう。
だが、株価のトレンドはまだ下げ方向と筆者はみる。これから、国内優良企業の四半期・中間決算がピークを迎える。びっくりするような業績悪化が出てくる。要注意だ。

2008年10月22日 (水)

ガソリン価格

取材で自家用車を使う機会が多い(極度な電車嫌いという理由もあるが)。
今夏、小説の舞台となる東北を取材するため、頻繁にクルマで陸奥を旅した。


ご存知の通り、夏場にかけてはガソリン価格がうなぎ上り。
陸奥の田舎では、ピーク時にリッター当たり190円程度(ハイオク)で売られていた。あとで経費精算するとはいえ、満タンにすると9500円!!


昨日、拙宅の近所のセルフスタンドで給油。
リッター当たり155円(同)。ガソリンスタンド系クレジットカード特典で割引が効くので、同145円に。満タンで7250円。ピーク時と比べ2250円の差が生じた。


1、2年前までは、満タンで大体5000円見当だったハイオク。まだまだ価格が下がってもらわないと、零細モノカキは依然苦しい。


金融危機のあおりで、ウルトラバブル状態だった原油先物市場が破裂。世界経済の変調を肌身で感じるモノカキなのだった。

2008年10月17日 (金)

バナナ・ボンド

 『東北新和は、ご多分に洩れず、怪しい高利回りの外債に手を出していました。今回の場合は、フィリピンのバナナ農園が発行した年利一五%の社債、金融市場ではバナナ・ボンドって言われている投機性の強い商品です。 (〜中略〜) 高利回りと為替差益を狙って、一発当て込んだのでしょう。しかし、思うようにリターンが得られず、さらなる高利回りモノに手を出した……。死にかけた金融機関がはまる典型的な悪循環ですよ』


 筆者のデビュー作『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)の一節である。


 バブル崩壊後に発生した不良債権を穴埋めするため、投機性の高い商品に手を出し、最終的に破綻に追い込まれる架空の地銀を描いたシーンだ(バナナ・ボンドも架空の債券)。


 閑話休題。


 先週、堅実経営で知られた中堅生保が突如、破綻した。政府はこの破綻について「高リスクの資産運用に傾斜した特殊な例」と強調し続けた。


 が、筆者はこれを鵜呑みにするほど素直ではない。早速、旧知のネタ元に取材したところ、「氷山の一角」だと言うではないか。


 「バブル崩壊後の不良債権」というキーワードを「サブプライム問題後の世界的金融危機」に置き換えると分かりやすい。


 「複数の地域金融機関は、貸し出しの伸び悩みに苦慮し、サブプラ関連商品での運用に傾斜、大やけどを負った。金融庁検査が入るまでに損を取り戻そうと、猛烈にリスクの高い商品を買いまくった。誰かさんが書いた小説と現状は全く同じ構図だよ」(別のネタ元=ちなみにこの人物は猛烈にリスクの高い商品を売り捌いていた当事者だ)。


 ネタ元からいただいたお言葉、素直に喜べない。『デフォルト』の第一稿を書いたのは四年前。しかも、執筆時はその数年前の出来事を引き合いにして冒頭のシーンを描いたのだから。
 結局、この国のシステムは何も変わっていなかったのだ。


 連載中の日刊ゲンダイのコラム「マネーの深層」(最新版)では、こうした事情に触れた。ご一読のほどを。


 近く、中小金融機関への公的資金注入を可能にするべく、「金融機能強化法」が復活する。
 

 全国の金融機関の金庫には、何本のバナナ・ボンドが眠っているのだろうか。

2008年10月16日 (木)

まだ序の口

昨晩15日の米NY株価が再び急落。
同国小売売上高急減のショックだそうだ。


一連の金融危機は、米国政府による個別行への
強制資本注入で一段落ついた、と酩酊作家はみる。


が、株価下落はこれから本格化する。まだ序の口なのだ。


ここ1カ月の世界的な株価急落劇を怪我人に例えると、
なぜこれから一層の下落が起こるのかが見えてくる。


先週までは、「アメリカ」や「欧州」という怪我人が
ERに担ぎ込まれた状態だった。


ERの担当医師は、大量失血(金融機関の資本が毀損
している状態)をみて、緊急輸血を決めた。


とりあえずの輸血を施したあと、他の病気を持っていないか
を検査したところ、あちこちに綻びがあることが判明した。
それが昨晩のNY市場だ。


これから怪我人(病人でもある)の根本治療を始める、
という段階。昨日の米小売売上高は、検査でみつかった異様な
低血圧のようなものだ。


金融という血液が巡らなかったことで起こった一連の株価下落。
公的資金という輸血を施し、なんとか人体そのものが死ぬ事は
回避した。しかし、これから、低血圧やら肝臓病、胃腸病の治療
が始まるのだ。

ちなみに、小売売上高は先月のデータを集計したもの。
足元の数値はより一層悪化しているのは明白だ。

所詮、アメリカの事というなかれ。
統計の粗データには、多数の日本製品がカウントされている。
今までは米国の金融恐慌発の株価下落だったが、今後は、米国消費の
落ち込みをもろに受ける形で、日本企業の業績が圧迫される。
すなわち、日本の株価の下落は、これから本格化するのだ。


手元に数日前の取材メモがある。
米国の年末商戦を控え、日本企業の生産や在庫動向を詳細に綴ったものだ。
ディープなネタ元から入手したデータだ。
正直なところ、ひっくり返った。ものすごく内容が悪いのだ。


近々、日刊ゲンダイで連載中のコラム『相場英雄・マネーの深層』
http://gendai.net/?m=list&g=syakai&c=020&s=182にて詳細を展開する予定だ。


金融危機は終わっても、今度は景気後退というボディーブローが効いてくる。